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兵庫県立大学  川上昌直教授との対談

世の中には、創業して100年以上を超える「長寿企業」がある。それらに共通するのは、確固たる企業理念と、醸成された組織文化。その二つが合致しているからこそ、社員の目指すべき方向はひとつになり、施策に統一感が生まれてくる。福祉村の起源となる山本病院が開設して、55年が経過した現在。この節目に立ち、今後、ますます日本の医療と福祉の向上に貢献するため、さわらびグループはどうあるべきか。兵庫県立大学経営学部教授の川上昌直先生に、じっくりお話をうかがった。
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「一人ひとりがパズルのピース。施設全体で機能が最適化されている」(川上)

川上:今日、初めて福祉村を一周してみましたが、こんなに巨大な施設だとは思いませんでした。こちらへ来るまでは、大きな敷地に同じようなファシリティの施設がたくさん並んでいるのだろうと、漠然と考えていたのですが、実際は、一つ一つの施設がそれぞれ異なる機能を持っていて、職員の制服のクリーニングなどバックヤードの仕事まで、施設内で完結している。素晴らしいと思います。

左近:1962年、私の父が豊橋に「山本病院」を開院して以来、理想の老人天国を作りたいという思いを実現するために1978年、福祉村の建設が始まりました。このように、さまざまな機能が一カ所に集まった医療福祉施設は、当時としてはとても画期的なことだったと聞いています。

川上:私自身、いろいろな医療福祉施設を視察しますが、これほどまでに多機能で、充実しているところは見たことがありません。多くの施設が経営難に悩んでいて、人件費などの固定費が大変とか、入居者が当初の目算より少ないとか、それぞれの問題があるようです。

左近:確かに、そのような話は私たちにとっても課題はあります。

川上:もちろん医師など、経営のプロではない方が運営しているのですから、問題もあるのだろうと思いますが、その点、福祉村はすごいと思うんです。プロの経営者でも失敗するようなことを、きちんと利益を出しながら続けているのですから。

左近:今の時代に、このような施設をゼロから作ろうとしたら、それはとても大変なことだと思います。でも父は、初めからこのような全体像をイメージし、ひとつずつ完成させていったそうです。ひとが幸せにいきていくためには、機能の異なる施設が一カ所に集まっていることが大切だ、と考えたのです。

川上:それはどういうことですか。

左近:たとえば、高齢者施設だけとか、福祉施設だけとか、単一の施設だけだと、同じ特性で、同じ障害を持った方達がそこに集まることになります。同じ特性だと助けあえないんです。しかしいろいろな特性をもった方が集まれば、みなさん、それぞれできることや得意とすることが違うので、お一人ずつ、ご自分の役割をもつことができるのです。

川上:確かに、こちらには職員のお子さんをお預かりする保育園から、特養や障害者施設まで、さまざまな性格の施設が揃っていますね。

左近:そうすると、子どもからお年寄りまで、誰もが自分の役割をもつことができます。たとえば、毎月、保育園の子ども達が高齢者の施設の誕生日会や敬老会で歌や踊りを披露する機会があるのですが、そうすると利用者の方々は本当に涙して喜ばれるんですよ。反対に、クリスマスの時期には利用者さんがサンタクロースの格好をして保育園を訪れ、子ども達にプレゼントを届けることもあります。

川上:なるほど。年齢や障害の有無に関わらず、みんなが役割を果たすことができるのですね。

左近:さわらびグループでは、誰もが それぞれの役割を持ち、今、自分にできることで周りの人に役立つ働きをすることを、「幸せ」と考えています。みんなが違う個性を持ち、違うことを得意にしているからこそ、福祉村全体で幸せを循環することができるのだと思います。

川上:一人ひとりがパズルのピースみたいですね。どこかのピースが欠けると、機能不全が起きる、というような。通常、このように大規模な組織では、一部の部署だけが生産性や効率性を向上させ、組織全体としては機能性が低下してしまうという、部分最適の状態に陥りやすいのですが、福祉村は施設全部が最適化されている。それが、こちらの特徴ですね。

「55年の歴史は、福祉村の“出汁”。ここに火を入れ、新たな味に進化させる」(左近)

川上:現在、施設の入居率はどれくらいですか。

左近:施設によって若干、ばらつきがありますが、入所施設ですとほぼ95〜100%稼働しています。

川上:一般の方が福祉村の情報と出会う、最初のタッチポイントはどこにあるのですか。

左近:一番多いのは、ご自分の親御さんやおじいさん、おばあさんなど、身内の方が福祉村を利用されていることがきっかけで、福祉村のことを知るケースですね。
[先ほど、施設全体の最適化のお話がありましたが、私は同時にミクロでの最適化も必要だと思うんですよ。私たちさわらびグループが大事にしているのは、一人一人に合わせた医療や福祉サービスを提供すること。一人一人に寄り添い、最適な支援が必要で、その積み重ねが、一般の方に選ばれる施設づくりにつながるのではと考えています。]

川上:福祉村の起源である山本病院が開設されてから、すでに55年が経過していますが、広く生活者に選ばれる施設に育っているということが、この55年間の価値なのでしょうね。誰かがこちらで幸せな最期を遂げることができて、そうした人たちの話が長い時間かけて、この地域に広まっていったのでしょう。それは、言い換えれば、55年間かけてできた“出汁”と言えるのかもしれません。

左近:“出汁”とは面白い表現ですね。確かにそういう面もあるのだろうと思います。ミクロの力は軽視できるものではなく、日々、現場で働いている職員の一人一人が福祉村の広告塔でもあるのだと思っています。

川上:それもひとつのブランディングであり、福祉村のそうした姿勢が、すべての職員に浸透しているのでしょうね。企業のブランディングには意図的に仕掛けるものもありますが、じっくり時間をかけて脈々と受け継がれ、自然と周囲に馴染んでいくというものもあります。つまり、創業年数が経つということ自体がブランディングであり、それは決して他の企業には模倣できない、その企業ならではの強みになるんですよね。

左近:55年かけてじっくり熟成してきた歴史の重みが、さわらびグループのブランディングになっているということですね。

川上:それが「スタートアップは決して模倣できない」といわれる所以ですよね。優秀な人材は引っ張って来られるし、資金も調達することができるけれど、創業から蓄積されたナレッジだけは決して真似できない。たとえば、私が大学の授業で学生に決算書の読み方を教えるとき、「一番最初に、どこを見るか?」という話をするのですが、左近さんならまず初めに、どの部分を見ますか。

左近:期数ですね。それが、何期目の決算なのか、っていう。

川上:さすが! そうなんです。つい、損益計算書やバランスシートなどを読んでしまいがちなのですが、まず、「何期目なのか」ということを見ると、その企業の信頼性がわかるんです。長く続いているということは、それだけ長い時間をかけて“出汁”が出ているということ。それ自体が、その企業の価値であり、ブランディングなんです。

左近:確かに、福祉村には父と母が長年時間をかけて作り上げた“出汁”が出ていると思います。そこへ私が経営に加わって、さらに事業を良くしていこうとしている。しかしそうすると、せっかくいい具合に味が濃くなった“出汁”が薄まってしまうのではないかという懸念もあります。湯量が増えれば増えたぶんだけ、味が薄くなってしまいますよね。

川上:それが、創業年数の長い企業の難しいところですね。昔は仙人みたいに、「会社のことでわからないことは、この人に聞け」というような人が必ず社内にいて、その人に尋ねればなんでもわかったのに、年数が経てば人も当然入れ替わる。“出汁”が薄まって、企業の存続そのものが途絶えてしまうということも少なくありません。

左近:でも、ラーメンや蕎麦などでも同じだと思いますが、出汁は定期的に火を入れなければいずれ腐ってしまいます。企業もそれと同じなのかなと思いますね。つまりここには両親が作った濃い“出汁”があって、55年間をかけて、今最適なバランスが保たれるようになった。しかし、創設55年という節目を迎え、変化する社会のなかで、これまでのことを継続したり、新しい事業を展開したりしていこうという現在、もう一度火を入れ、味を微調整していくことで、さらに美味しい“出汁”へ進化させていくことができるのかなと思うんです。

「イノベーターは、逆風の中を進む。だからこそ、現実を変えられる」(左近)

川上:今日、福祉村を歩いて回りながら、私もそう感じました。長年、流行っている飲食店もそうですが、ずっと同じ味のようでいて、実は、時代の流行りや流れによって、微妙に味付けを変えているんですよね。でも、ベースとなる“出汁”は同じだから、基本的な美味しさは変わらない。企業もこれと同じで、時代の流れに合わせ、環境と適合させるため、経営を調整していくことが必要だと思うんです。

左近:それも根本に、しっかりとした“出汁”が確立されているからこそできるのですね。

川上:そう。福祉村の“出汁”をアレンジするものがあるとしたら、そのひとつはテクノロジーだろうと思います。先ほど左近さんから「福祉村にテクノロジーを取り入れることで、今後の少子高齢化に対応していく」という計画をお聞きしましたが、そうやって時代のニーズに合わせながら組織を変化させ、成長していくことによって、いつの時代でも適応できる企業になるのだろうと思います。

左近:父である理事長がこの福祉村の建設を開始したのは、今からちょうど40年前。今、次のステージへ進むために、出汁にアレンジを加えるタイミングですね。

川上:おそらくお父様は、当初、少なくとも40年間は適応できる組織を作ることを考えられたのだと思います。今から40年前に建設を始め、福祉村が現在の体裁に整ったのは約10年前。まさに今が、これから先の展開を考えるべきターニングポイントで、「古き良き時代の福祉村」と、「新時代の福祉村」をマッチングさせることが必要なのだろうと思います。

左近:ここで新しく“火入れ”をし、今後数十年をかけて、再び美味しい“出汁”に仕立てていくということですよね。

川上:長寿企業と呼ばれるには創業100年がひとつの目安になりますが、100年間、経営を持続することは決して容易なことではありませんし、まず、体質が柔軟でなければ実現は難しい。時代の変化に対応できる企業が、長く続いているのだと思います。人間もそうですが、年数を重ねれば重ねるほど、企業の性質は頑固になります。変化を嫌い、現状維持を好むようになる。でもそうなると、必ず成長はストップし、近い将来、だめになってしまうでしょう。

左近:100年企業になるために、企業には変えていいものと変えてはならないものがあると思います。絶対に変えてはいけないものとは何でしょうか。

川上:まずは、企業の理念ですね。言い換えれば、組織が存在する目的となるでしょうが、それを変えてしまうと組織の存在そのものがブレてしまう。逆にいうと、理念以外は何を変えてもよく、目的を達成するための手段は、時代に応じてどんどん調整し、変えていくべきだと思います。

左近:父が常々話していた言葉は2つあって、ひとつは、「みんなの力で、みんなの幸せを守る」という、さわらびグループの基本理念。もうひとつは、「時代の変化を先読みし、世の中がどう変わるか敏感に察して、時代の変化に自分を合わせて行動しなさい」という教え。つまり、時代の先を見て、適応する行動をしなさいということで、これはまさに父の行動そのものだと思います。父は山本病院を開業するとき、55年後の未来をイメージし、その時代に適合できるものを作った。まさに時代の先を読み、当時は誰もやらなかったことを、自分の信念を信じて黙々と努力し続けたんです。その頃は高度経済成長の真っ只中で、誰も今のような高齢社会が訪れ、認知症患者が急増するとは、予想もしていませんでしたから。

川上:一般に、イノベーターは嘘つきと呼ばれることもありますよね。たとえば、民泊が流行ると言われても、はじめは誰も信じなかった。でも、必ず民泊が流行る時代が来ると信じた人は、資本と技術力を投資して、その時代が訪れるのを待った。結局、そういう人たちが時代をリードし、成功を収めていくんですよね。

左近:実際、父も周囲からかなり批判を受けたようです。同じ医師仲間からも、「認知症がリハビリでよくなるはずがない」と言われたり……。でも、今となっては、認知症がリハビリで改善されることはエビデンスもありますし、社会では当然のこととして認識されています。時代の先端をいくということは、逆風の中を進むということでもあるんですよね。

「F1は変化と革新の世界。時代を先読みする感覚が、医療と福祉の事業でも活きている」(川上)

川上:どんな組織でもそうですが、尖ったことを言うと必ず批判にあうものです。でも、5年くらい言い続けると、おのずとそれがその人のスタイルになる。だから自分の信念を大事にし、組織の理念を守り続けることが大切なんです。

左近:グループの施設に、「明日香」という障害福祉サービス事業所がありますが、そこで去年、「felico」というヴィーガンクッキーのブランドを立ち上げたんです。これまでも20年以上クッキーを製造販売していて、豊橋市内ではそこそこの知名度もあり、売り上げも好調でした。でもせっかくなら、もっとオーガニックな食材を使用して、おいしいだけでなく健康にもよく、バターや小麦粉にアレルギーを持った方も食べられるものを作りたいと思ったんです。

川上:なるほど。それでヴィーガンクッキーを始めたんですね。

左近:でも、このアイデアを周囲に伝えた時、まったく賛同を得られませんでした。そもそもビーガンクッキーに対する知識もなく、いま、作っているクッキーが売れているのだから、それで十分じゃないかと言うんですね。しかし私は、このまま現状を維持していたら何も成長がなく、いずれ破綻すると思っていました。それで、「できない理由を並べるより、チャンスを逃さないことが大事。とにかく作ってみましょう」と指示し、ビーガンクッキーの開発に乗り出したんです。その結果、現在ではオンラインショップのほか東京の人気雑貨店でもイベント出店するなど、想像以上の反響を得ています。

川上:消費者の方にクッキーを知ってもらうことで、施設や福祉村の知名度も上がりますし、その利益を施設の利用者さんや職員へ還元できるというわけですね。どれだけ優れた製品やサービスも出口がなく、市場へ出ていかないと、企業を潤すことはできませんよね。

左近:福祉村には異なる特性の人が一同に集まっていますから、福祉村自体がマーケットにもなりますし、入り口にも、出口にもなり得ます。そういう意味ではここは非常に特殊で、ある程度安定しているのですが、しかし、医療や福祉の事業は保険制度に支えられているため、政府の施策によって保険収入が削減されれば、たちまち経営が困難になるというリスクもあります。だから、少しでもそうしたリスクを減らすため、組織として自立できることを増やしていきたいんです。こうして「felico」を立ち上げたことで、医療や福祉以外の業界の人たちとも、繋がりをもつことができたのも、私たちにとってはとても大きなメリットでした。

川上:左近さんがさわらびグループの経営に参画されてから、6年。ずいぶんたくさんの改革をされてきたんですね。

左近:私が変えたことを数えればキリがありません。職員の方々は理事長のやり方に慣れていましたから、最初は「どうして変える必要があるのだろう」と理解できないこともあったかもしれませんね。でも、私にできることは、「なぜ、変える必要があるのか」を説明し続けること。人は変化を嫌う性分ですが、やり続けることで、いずれ、それがスタンダードになるのだろうと思います。

川上:変化を当たり前のものにしていく、ということですね。

左近:6年前、拠点としていたヨーロッパから日本へ戻ってきた時、私は福祉村に危機を感じたんです。確かにここは、安定して落ち着いているかもしれない。だけどその反面、成長も変化も少ない。今後、自分はF1レーサーとしてのキャリアを糧に、一体何ができるだろうと考えたとき、さわらびグループをさらに進化させていくことだと思ったんです。

川上:F1も変化と革新の世界ですよね。テクノロジーもレギュレーションも常に変化していきますから、F1では常に、変化のさらに先を見据えた行動が求められるのだろうと思います。その経験が、今に活きているのでしょうね。

「テクノロジーの力で、組織文化に新たな風を取り入れたい」(左近)

左近:この福祉村が完成した当初は、「施設ありき」「病院ありき」でも経営が成り立ったかもしれません。しかし今後、ますます高齢者が増え、市場の競争も激しくなり、国際化が進む中では、以前のような視点での施設経営はうまくいかないと考えています。もっとパーソナルな医療やサービスに焦点をあて、個々に最適なケアを提供できる施設にならなければなりません。言うなれば、福祉村としての“出汁”は共通だけど、ある人にはカレーを、ある人にはシチューを、ある人にはポトフを、というように、個々に最適化されたサービスを提供できるような施設に進化させていきたいんです。私は、それを可能にしてくれるのが、テクノロジーだと思っています。

川上:“出汁”を持たない施設なら、カレーもシチューもポトフも、いちから作らなければならないでしょう。しかしここには歴史が育んだ“出汁”がある。だから、新たにテクノロジーを搭載することで、個々に最適化されたサービスを柔軟に提供できるのですよね。

左近:さわらびグループの一番の強みは、55年間の事業の実績と、その中で作られてきた文化です。それを“出汁”と呼ぶなら、それを生かすも殺すも調理人の腕次第。だからこそ、職員一人一人が高い意識を持ち、成長していくことが必要なんだと思います。

川上:“出汁”という言葉は、パソコンでいうとOSに例えられるのかもしれませんね。すなわち、OSのバージョンアップを定期的に行いつつ、その上で走らせるアプリやソフトもニーズに応じて開発していく。福祉村の場合、基幹システムとなるOSは55年前に作られていて、それをバージョンアップしながら、時代に即したサービスを開発しています。それが福祉村の強みなのでしょうね。

左近:確かに、基幹システムのOSの部分に「みんなの力で、みんなの幸せを」という理念がしっかり組み込まれていて、それはこの55年間、まったく揺るがずに尊重されています。それがベースにあるからこそ、柔軟に動けるのかもしれませんね。

川上:でも実際は、90%以上の企業は理念を持っていないことが多くて、創業からしばらくして社員が増え、違う方向をむく人が出始めた時に、初めて理念を言語化するケースがほとんどなんですよ。それで、創業の時を知っている古株の社員たちにヒアリングをして共通項を見出し、ようやく理念を言語化して、将来的にも使えるOSとして成型する。つまり、理念の前にノンバーバルな文化というものが醸成されていて、それをバーバルに変えていくのが、ほとんどの企業の流れです。

左近:なるほど。組織文化から理念が作られるということは、本来は、文化と理念が合致しているべきものということですね。

川上:そうなんです。でも実際は、文化と理念が合致しておらず矛盾が生まれ、惰性を大事に行動してしまうことが多い。そうすれば、おのずと組織は破綻してしまいます。さわらびグループの場合は、はじめに「みんなの力でみんなの幸せを」という理念があり、そこから文化が醸成されていった。これは最大の強みだと思いますね。今、始まりから55年が経って、もう一度理念を見直す時期がきているのだろうと思います。この時期に、新しい文化を生み出す組織体制に流れを向けられると、ますます上昇気流に乗ることができるのではないでしょうか。

左近:これからも理念と組織文化を合致させながら、次のステップを目指していきたいと思います。本日は貴重なお話をいただき、どうもありがとうございました。

川上昌直  かわかみ・まさなお
1974年大阪生まれ。2001年 神戸商科大学大学院博士後期課程修了、現在、兵庫県立大学経営学部教授、ビジネス・ブレークスルー大学および大学院客員教授。「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。企業の経営理念の構築やプロダクトのブランディングなどの顧客価値提案にも多数携わる。
主要著書:『マネタイズ戦略 顧客価値提案にイノベーションを起こす新しい発想』(ダイヤモンド社)、『儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書』(かんき出版)、『そのビジネスから「儲け」を生み出す9つの質問』(日経BP社)など。

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