山本左近NEWS No53

2025.6.3

私が携わるさわらびグループでは、8年前から障害者支援施設「明日香」を中心に、自然栽培でお米づくりをしています。毎年、保育園児や地域の皆様と一緒に農作業を行なっており、今年も先日、田植えを終えたところです。知識のない状態からスタートし、豊作・不作もありながらもなんとか継続しています。実際にお米づくりを行なってみると、ほんの少しですが、生産者の皆さんのご苦労を実感します。

そこで、今回は、最近、聞かない日はない「コメ」の問題について、生産者の皆さまの視点も含め解説していきます。

 

《現状》

日本の食料自給率は37%。他方で、コメの自給率はほぼ100%。食料自給率に占める割合も大きく、日本人にとってコメは食料安全保障の要です。

生産者側に目を向けると、コメ農家の平均年齢は71.1歳と高齢化。長引く米価の低迷で、収益が圧迫され、離農者は増え続けています。農地面積はピーク時の約7割となっています。

 

《米価はなぜ下がったか》

米価は、過去30年間下がり続け、直近10年は横ばいで推移。この理由は、日本人の食卓の多様化によるコメ離れ、高齢化と人口減少により、コメの需要が下がり続けてきたことにあります。

コメは豊作になれば、供給が需要を上回り価格が下がり、生産者の事業継続は難しくなります。とはいえ、天候など様々な事由に左右されますので、毎年必ず一定量を作るということはできず、常に需要分だけを作る供給体制の構築は不可能です。そのため、国は、様々な施策を駆使しながら需給のバランスを保ってきました

 

《米価の高騰はなぜ起きたか》

このような状況の中で、昨年8月、南海トラフ大地震の注意報が1週間続き、各家庭でお米の買いだめが起こりました。その結果、絶妙な需給バランスの上に成り立っていたものが一気に崩れ、昨今のコメ価格の高騰が始まりました。また、総需要量に対して生産量が下回ったことも高騰を始めた原因だと考えられています。今年に入り、コメの価格は昨年の2倍以上に急騰。今、執筆時点では平均価格5kg4285円と過去最高価格となっています。

 

《政府の対応》

小泉農林水産大臣は、政府備蓄米を素早い放出を指示。備蓄米がスーパーなどに並び始めています。農水省は、3月から7月にかけて備蓄米61万トンを放出予定です。備蓄量は約30万トンに減る一方で、補充の見通しは現在立っておらず、危機に備えた制度の土台が揺らぐとの声も聞こえます。また、備蓄米は玄米で保管され、精米作業が必要となることから、精米業者への依頼が殺到し処理が追いつかないのではとの指摘もあります。

 

コメ価格については、予断を許さない状況が続きます。政府と事業者、生産者が一丸となり、まずはお米を各家庭に確実に届けること、それとあわせ、米価がコメ農家にとって再生産可能な価格となり、食糧安全保障という観点からも、持続可能な農業となるように努めてもらいたいと思います。

 

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