山本左近NEWS No59

2025.7.16

最近、学校で盗撮された画像などを共有するコミュニティがあったことが報道され、子や保護者に不安が広がっています。

子どもへの性暴力等は、生涯にわたり心身の発達に深刻な影響を与えるものであり、絶対に防がなければなりません。こうした背景を受けて、昨年、日本版DBS(ディスクロージャー・アンド・バリング・サービス)法が成立しました。

 

今回は、日本版DBSについて解説します。

 

《DBS法とは》

DBS法は、子どもと直接接する職場における児童対象性暴力等を防止するためにイギリスで導入された法制度です。ディスクロージャーは「開示」、バリングは「除く、禁止」と訳せますので、「犯罪歴の開示・照会と職業制限を行う制度」との意味です。

 

《経緯》

学校など子どもと大人が閉ざされた空間を共有する場で、教員による盗撮や不適切な接触といった児童生徒への性暴力が後を絶ちません子どもが被害に遭ってからでは遅い。そのため数年間、議論を重ね、昨年6月に日本版DBS法が成立しました。一刻も早い施行が求められるなか、来年の施行に向けて、今秋に制度の骨格が中間取りまとめとして示される予定です。

 

《日本版DBSとは》

この法律の大きな特徴は、教員や保育士、塾講師など、児童生徒と日常的に接する職業に従事する人の過去の性犯罪歴を、採用時など必要に応じて事業者や行政が確認できる仕組みを整えた点にあります。これまでは、性犯罪歴の確認は困難で、性犯罪歴があっても教育現場に再度関わるリスクがありました。

DBS法の成立により、こうした「見えないリスク」を可視化し、雇用側が適切な判断と対応を取れる環境が整備されました。また、DBS法は性犯罪歴のみならず、雇用制限や情報提供の手続きを明確に規定し、現場や自治体の実務においても一貫性と透明性を持たせることを目指しています。

これにより、子どもたちを守るための抑止力が強化されるとともに、性犯罪歴のある者が再び教育現場に戻ることを未然に防ぐ制度的な枠組みが整備されました

もっとも、犯罪歴という重要な情報が本人以外の一般の人に知られる制度ですから、その情報の管理体制など、施行に向けて取り組むべき課題は多くあります。

 

《子どもたちが誰一人性暴力等にあうことがない社会の実現を目指して》

今後、日本版DBS法の運用開始に向けて、現場の声を反映したルールづくりや、加害リスクを早期に察知する研修・啓発活動の拡充が不可欠です。また、被害を受けた児童生徒への継続的な支援と、再発防止のための倫理教育も重要となります社会全体で子どもの安全を守る意識を高め、DBS制度をより実効性のあるものとするための不断の努力が求められます。

 

 

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