山本左近NEWS No62
2025.8.6
8月に入りました。
今年は、戦後80年の節目を迎えます。2015年8月14日、安倍総理が閣議決定を経て発表した「内閣総理大臣談話(通称:70年談話)」は、戦後50年の「村山談話」、60年の「小泉談話」に続く政府の公式見解であり、歴史認識の継承を重視したものです。
今、石破総理が閣議決定を経て80年談話を出すかどうか、大きな注目を集めています。そこで、今回は、この談話について解説します。
《70年談話の意義》
10年前に当時の安倍総理が発表した70年談話は、「先の大戦への道のり、戦後の歩み、20世紀という時代を心静かに振り返り、未来への知恵を学ばなければならない」と述べ、300万人余の命が奪われた戦争の惨禍を繰り返さないとの決意を示しています。
また、植民地支配や武力による解決からの永遠の決別を宣言し、自由と民主主義を基礎とする平和国家としての道を、誇りを持って歩んできたことを強調しています。
「70年談話」が特に重要なのは、戦争を直接知らない世代が国民の8割を超える中で、「謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」とし、歴史と真正面から向き合い、謙虚に受け継ぎ、次の世代に引き渡す責任を未来志向で語っている点です。
また、戦後復興において、国際社会、とりわけ元敵国からも差し伸べられた善意に感謝を述べています。「繁栄こそ平和の礎」として、自由で、公正で、開かれた国際経済システムを発展させ、途上国支援を強化し、世界の更なる繁栄を牽引する世界への貢献を誓っています。
この80年の節目にあたり、私たちは改めて、豊橋や豊川における痛ましい歴史にも目を向けなければなりません。
1945年8月7日、終戦直前に米軍によって行われた豊川海軍工廠への大規模爆撃。学徒動員された多くの若者や一般市民を含む2,500人以上が命を落としました。
この惨劇は、戦争の非情さと平和の尊さを私たちに今も強く語りかけています。改めて犠牲となられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げ、深い哀悼の誠を捧げます。
《80年談話について》
石破総理は、様々な声を受けて早々に「80年談話」の閣議決定を見送りましたが、4日の衆院予算委員会で、戦後80年にあわせた見解の発出は必要との認識を示しました。
また、発表日は、8月15日ではなく、日本が降伏文書に署名した「9月2日」とする可能性があるとの報道も出ています。
この動きに対し、国際政治学者・細谷雄一慶應大学教授は、「歴史認識の複雑化」や「ロシアのプロパガンダへの加担」の懸念を指摘しています。
ソ連は、日本軍の戦闘停止後も違法な攻撃を継続し、北方領土を占領しました。ロシアや中国は、戦後の正当性を「9月3日」に置き換えることで、こうした行為を正当化しようとしています。
もし日本政府が「9月2日」に談話を出すことでそれに迎合すれば、アジア諸国や国内の歴史観にも新たな亀裂を生む恐れがあります。
私は、今すべきことは、歴代談話の精神を継承すること、反省と未来志向をバランスよく表現した「70年談話」の意義と一貫性を尊重し、平和国家としての歩みを確かな言葉で国内外に発信することだと考えています。
この談話は、日本国内だけでなく、アジア全体、さらには国際社会との関係にも大きな影響を与えます。
真摯に過去と向き合いながら、継承すべき理念、すなわち、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとすること。その価値を共有する国々と手を携えて、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献する平和国家としての誓いを未来へとつなげていくこと。そして、適切な形で発信を行うこと。これらが極めて重要であり、期待されるものだと考えています。