山本左近NEWS No80

2025.12.16

南鳥島は、日本の最も東に位置する小さな島です。人は住んでいませんが、その周辺の海は日本の排他的経済水域(EEZ)に含まれています。EEZとは、その国が資源を調査し、利用できる権利を持つ海の範囲のことです。

 

近年、この南鳥島沖の深海に「レアアース泥」と呼ばれる貴重な資源が多く存在することが分かり、大きな注目を集めていますので解説します。

 

《レアアースと経済安全保障》

レアアースは、電気自動車や風力発電、スマートフォン、半導体、防衛装備など、私たちの暮らしや社会を支える製品に欠かせない材料です。しかし現在、世界のレアアースの供給は特定の国、とりわけ中国への依存度が高いのが現状です。もし輸出が制限されれば、日本の産業や生活に大きな影響が及びます。重要な資源や物資の海外依存による供給不安が、国の経済や安全に及ぼすリスクに備えることは、「経済安全保障」の取り組みの一つです。

 

その点で南鳥島沖のレアアースは、日本のEEZ内にある「自前で確保できる可能性のある資源」です。

 

特に電気自動車のモーターなどに不可欠な重レアアースが多く含まれており、中国への依存を減らす切り札として期待されています。単なる資源開発ではなく、日本の産業や安全を支える戦略的な意味を持っています。

 

他方で、南鳥島のレアアースは水深5,000〜6,000メートルという非常に深い海底にあります。そのため、すぐに大量に採取して利用できるわけではありません。日本は段階的に取り組みを進めており、まずは科学的な調査や技術開発を行い、その後に実証実験を重ね、将来の実用化につなげる方針です。

 

《支える二つの組織》

この取り組みを支えているのが二つの組織です。JAMSTEC(海洋研究開発機構)は、深海の地形や地質、生態系、採取技術などの研究を担っています。

 

JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)は、国の立場で資源量を評価し、将来的に民間企業が活用できるよう実証や制度づくりを進めています。研究のJAMSTEC、実用化のJOGMECという役割分担です。

 

《リサイクルについて》

ここで重要になるのが「リサイクル」の視点です。レアアースは製品に使われると回収が難しく、日本ではリサイクルが十分に進んでいません。今後は、使用済みの家電や自動車、産業機器からレアアースを回収し、再利用する仕組みを強化することが不可欠です。南鳥島のレアアース開発は、リサイクルを補完する役割として位置づけとしての役割、掘る資源と循環させる資源を組み合わせることが重要です。

 

《海洋政策と環境への配慮》

この問題は海洋政策とも深く関わっています。日本が自国のEEZを調査し、責任をもって管理・活用していることを示すことは、国際的にも大きな意味を持ちます。同時に、深海の環境への配慮も欠かせません。日本は環境影響を丁寧に評価し、慎重に段階を踏むことで、国際的に信頼される形で進めようとしています。

 

《まとめ》

来月の26年1月には、南鳥島において地球深部探査船「ちきゅう」を使い、海面下5500メートルにあるレアアースを含む泥を回収する予定です。成功すれば世界初となります。

 

レアアースは、経済安全保障、海洋政策、そしてリサイクルを含む資源循環を組み合わせ、日本の将来を支える重要なテーマです。

 

短期的な利益ではなく、長期的な視点で国の基盤をどう築くかが問われています。

 

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