山本左近NEWS No89

2026.3.13

3月8日、F1の2026年シーズンがオーストラリア・グランプリで開幕しました。今シーズンは、F1の歴史の中でも大きな転換点となる技術規則の変更が導入されており、モータースポーツの世界だけでなく、次世代モビリティの方向性を占う意味でも大きな注目を集めています。

 

《F1が示す次世代の姿》
今回の改革は、「レースとしてのエンターテインメント性」と「環境負荷の低減」を両立させるというビジョンのもとに設計されています。

 

最大の変更点はパワーユニットです。1.6L V6ターボエンジンという基本構成は維持されますが、これまで排気エネルギーを電力に変換していた「MGUーH」が廃止されました。一方で、ブレーキング時の運動エネルギーを回生する「MGUーK」の出力は大幅に引き上げられ、最大350kWとなります。これにより、エンジンと電気モーターがほぼ半分ずつ出力を担う出力比率が「50:50のハイブリッド」の構成へとなりました。

 

さらに燃料は、100%脱炭素燃料へと移行します。合成燃料やバイオ燃料など、将来の市販車にも応用可能な技術が前提となっており、F1は単なるレースの枠を超え、自動車技術の実験場としての役割を一層強めています。

 

また車体は小型・軽量化。またレース中のオーバーテイクを増やすことが狙われて前後ウイングが可動

する「アクティブ・エアロ」が導入されました。

 

《元F1ドライバーとして感じる課題》
しかし実際のレースでは、エネルギーが不足し、本来であれば全開で加速しているはずのストレートで減速しながらエネルギーを回収する場面も見られました。ドライバーの感覚からすると、こうした走り方がモータースポーツの最高峰であるF1の姿として本当に望ましいのか、疑問を感じる部分もあります。

 

もっとも、F1は単に速さを競うだけの競技ではありません。常に技術革新の最前線にあり、新しい技術には必ず課題が伴います。その課題こそが次の革新を生み出してきました。今回の規則変更も、自動車技術の未来に向けた重要な挑戦だといえるでしょう。

 

《激化する世界の自動車産業競争》

目を現実の自動車産業に移すと、世界では電動化の流れが地域ごとに異なる形で進んでいます。中国や欧州ではEV化が明確なトレンドとなっている一方、米国ではハイブリッド車が市場を牽引し、日本メーカーの競争力を支えています。

 

しかしアジア市場では厳しい現実もあります。中国市場では日系メーカーのシェアが1割を下回り、ASEAN市場でも6割を切りました。中国のBYDや、ベトナムのVinFastなど新興メーカーの急成長が背景にあります。

 

現在の自動車産業は、「電動化」「脱炭素」「国際競争」という三つの大きな変化の真っただ中にあります。

 

《日本のものづくりの底力》
それでも日本には大きな強みがあります。ハイブリッド技術、操作性や安全性、そしてモータースポーツで培われてきた高効率エンジン技術です。

 

F1で導入される高度なエネルギーマネジメントや脱炭素燃料の技術は、自動車産業が直面する「環境対応」と「走行性能の追求」を両立するためのヒントを示しています。

 

《技術革新を支える政治の責任》
こうした技術革新を、日本の産業競争力へとつなげていくことが政治の責任です。研究開発投資の促進、合成燃料など次世代燃料の社会実装、そして次世代自動車技術の国際ルール形成。これらを戦略的に進めていかなければ、日本の自動車産業は世界競争で後れを取る可能性があります。サプライチェーンの裾野が広く、日本経済を支える基幹産業である自動車産業。その強みを守り、未来に向けてさらに発展させていく政策を実行していくこと。それが政治の重要な役割です。

 

世界の競争が激化する中で、日本のものづくりが世界をリードできるよう、私も政治の立場から全力で取り組んでまいります。