山本左近NEWS No.111

2026.9.1

八月上旬、セントレアに隣接する愛知県国際展示場で開催された「第24回学生フォーミュラ日本大会2026」を視察しました。国内外から約90チームが参戦していました。

会場に入ってまず感じたのは、熱気です。広い会場に、ピットが所狭しと並びます。学生たちが工具やコンピューターを手に車両を取り囲み、エンジンに火が入るかを確かめる。問題が起きれば原因を探し、仲間と議論しながら修正を重ねる。かつてレースの現場にいた者として、あの空気は懐かしく、そして頼もしいものでした。

 

《学生自身で一台を完成させる》

この大会の大きな特徴は、既製のマシンを走らせるのではなく、構想から設計、製作、走行性能の実証までを学生たち自身が一貫して担うことです。車両を設計し、部品を調達し、組み上げ、走らせる。

壊れれば原因を探して直す。図面通りにいかない。想定した性能が出ない。

教科書で学んだ理論と、実際の「もの」との間にある壁に、何度もぶつかる。その一つひとつの失敗こそが、技術者としてかけがえのない経験になります。

 

《走らない審査にも、ものづくりの本質がある》

学生フォーミュラは、「どの車が速いか」だけを競う大会ではありません。設計思想を評価する「デザイン審査」、製造コストの妥当性を問う「コスト審査」、事業としての成立性を提案する「プレゼンテーション審査」があります。問われるのは、速さだけではありません。

「なぜ、この設計なのか」「いくらで、どうつくるのか」「それを、どうビジネスにつなげるのか」

学生たちは、部品調達や活動資金の確保にも自ら取り組みます。企業に協力を求め、限られた時間の中で一台を完成へ導いていきます。

そこには、まさに「ものづくり企業の縮図」がありました。

 

《自動車産業の集積地・愛知で開催される意味》

今大会は、愛知県に会場を移し三回目となります。世界でも室内の会場は日本だけだそうです。自動車産業の集積地で開かれることには、大きな意味があります。

会場では多くの企業が技術や部品の提供で学生を支え、第一線の技術者と直接言葉を交わす姿もありました。若い世代が本物の技術に触れ、現場とつながる。

東三河もまた、自動車関連産業と、そこで働く皆さんに支えられてきた地域です。

こうした環境が地域にあること自体が、将来の産業競争力を支える資産です。

 

《内燃機関の未来と、合成燃料》

大会には、ガソリンエンジンのICVクラスと、電気自動車のEVクラスがあります。

私は初当選以来、合成燃料の国産化と社会実装を訴えてきました

カーボンニュートラルへの道は、EV化だけではありません。燃料そのものを転換できれば、内燃機関の技術と、それを支える部品産業の雇用を次の時代へつなげられます。愛知と東三河には、その厚い産業基盤があります。

EVかエンジンかの二者択一ではなく、世界で競争できる選択肢を持ち続けること。そして、若い技術者が夢を持って挑戦できる産業を次の世代へ残すこと。それが、私たちの世代の責任だと考えています。

 

《ものづくりは、人づくり》

一台の車が走り出すまでには、数え切れない失敗と、それを乗り越えた時間があります。

思い通りにいかないから考える壊れるから原因を探す。自分一人ではできないから、仲間と力を合わせる。学生たちの真剣な表情に、日本のものづくりの底力を見ました。その力をつなぐために必要なのは、技術への支援だけではありません。

若い世代が失敗を恐れず、本気で挑戦できる「場」をつくることです。

 

ものづくりは、人づくり。日本の未来を担う若い世代の挑戦を、これからも全力で応援してまいります。

左近ニュース111号