山本左近 リオ パラリンピック 観戦記 その2

2016.9.16

何故アレックスザナルディは金メダルを取れたのか?

2001年9月15日にアメリカのレースCARTでの両足切断というアクシデントに見舞われた。その時、誰もが彼のキャリアが終わったと考えたに違いない。ただ一人ザナルディを除いては。僕らが想像できない早さでレース界に復帰しWTCCで活躍を遂げ、その後自転車競技に転向しパラリンピックロンドン大会で金メダル、そしてこのリオパラリンピックでもH5というハンドサイクルクラスでの20kmタイムトライアルで28:36.81というタイムで2位に+2.74秒差で金メダルを獲得した。僕が最も尊敬するドライバーであり真のアスリートである彼のレースを見ることが今回のリオパラリンピックで最も楽しみにしていた事の一つだった。
レースはルシオコスタ通りというビーチ沿いの道路を封鎖して行なわれた。右コーナーが2つ、ヘアピンカーブが4つという構成のサーキットで、僕が向かったのはヘアピンカーブだ。その理由はブレーキングとコーナリングに興味があったから。各クラスのアスリート達がとんでもないスピードで駆け抜けていく。フェンス沿いにしゃがんで見ると、迫ってくる車両がゴーーーという車輪の音とタイヤと車両を軋ませながらあっという間に駆け抜け曲がっていく。3輪ハンドサイクルはコーナリング時の前輪のきれ角は少ない様子で、体を使ってコーナーを曲がっていく様子は見るものを興奮させる。
何故アレックスが勝てたのか。最も大きな勝因はコーナリングにあると僕はみた。
アレックスは誰よりも無駄のない綺麗でスムーズなコーナリングをしていた。20kmのレースで2.74秒差というのは2周のレースなので8つのヘアピンを2位のライバルに対して0.34づつ速かったことになる。こうやって考えていただくと如何に僅差で且つタイトなレースだったかということが分かってもらえると思う。
決して楽な勝負ではなかった。本人の不屈の精神力と常に前を向いて挑戦し続ける姿勢が大前提の上で、レースで培ってきたコーナリング感覚を生かして掴んだ勝利はモータースポーツに携わるものとして彼を本当に誇りに思う。Bravo Alex!!

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