山本左近NEWS No.114

2026.9.18

イタリア・イモラ。F1ファンなら誰もが知る高速サーキットを、ドライバーのいないマシンが疾走しました。完全自動運転車が速さを競う「A2RL」です。コックピットもステアリングもなく、積むのはスーパーコンピューターとGPS、レーダー、カメラだけ。かつて座っていたコックピットに機械が座っています。

モータースポーツで磨かれた技術は必ず市販車に降りてくる。シートベルトもクラッシュテストも、そうでした。文字通り、自動運転を加速させることが期待されています。

 

《東京は、2027年》

その「降りてくる」が加速しています。タクシーアプリ「GO」、米ウェイモ、日本交通の三社は、27年中に東京で国内初のレベル4「運転席が無人の商用タクシー運行」を目指すと発表。また、テスラも無人タクシー専用車「サイバーキャブ」を日本初公開。ハンドルもペダルもない、二人乗りの車です。

 

《自動運転は「見えない」と判断できるか》

自動運転の実用化が近づく一方で、安全性をどう担保するか。その鍵の一つが、車が周囲をどう「見る」かです。

サイバーキャブはカメラを中心に周囲を捉えます。一方、ウェイモはカメラに加え、レーザーで立体的に捉えるLiDARや、電波で距離・速度を測るレーダーを組み合わせています。同じ自動運転でも、周囲を認識する仕組みは異なります。

カメラは信号や標識の読み取りに優れますが、豪雨や逆光に弱い。LiDARは立体を精密に捉え、レーダーは雨や霧の影響を比較的受けにくい。それぞれが弱点を補いますが、センサーを増やせば、どんな天候でも走れるわけではありません。

本質は、周囲を「見える」ことだけではなく、認識できていない状態を自ら判断できるかにあります。

人は豪雨や濃霧で視界が悪くなれば速度を落とし、危険を感じれば停止します。自動運転も同じように、センサーが正常に機能しているかを監視し、認識の限界を超えたと判断したら、安全に減速・停止しなければなりません。安全性とは、走り続ける能力だけでなく、走れない状況を見極めて止まる能力まで含むものです。

 

《日本の気候が、技術を磨く》

海外でも雨、霧、雪の中で検証が進んでいます。だからこそ問われるのは、線状降水帯、台風、豪雪、濃霧、道路冠水など、日本特有の厳しい環境で、どこまで安全を担保できるかです。

日本の厳しい環境を、自動運転の弱点ではなく技術を磨く機会に変える。そこで培った認識限界の判断や安全基準を、世界に広げていく視点が必要だと考えます。

 

《自動運転を、この東三河の地から》

運転士不足や高齢者の移動、農産物の輸送など、地域の移動と物流を人手だけで支えることが難しくなっています。自動運転は、その前提を変えうる技術です。

しかし、商用サービスは採算の取れる都市部から始まりやすい。放っておけば、最も必要とする地域ほど導入が遅れます。だからこそ、国の支援を実証から実装へ進め、必要性の高い地方から導入できる環境をつくることが重要です。

豊橋市も田原市も、すでに実証を重ねてきました。次は、実際のバス路線や農産物の物流で使う段階です。

モータースポーツにおいても自動運転が始まりました。しかし、自動運転の技術だけでは、地域の日常にはなりません。自治体、交通・物流事業者、地域の皆さんと一緒に、実際に走らせ、課題を一つずつ解決し、東三河で実用化につなげていきます。

左近ニュース114号 (1)