山本左近NEWS No.118
2026.10.19
《世界に広がるF1と、日本GPの将来》
10月13日、アフリカのルワンダで2030年代初頭からF1を開催する10年契約が発表されました。
欧州を中心に開催してきたF1は、米国、アジア、中東へと市場を広げ、世界的な人気を集めています。元F1ドライバーとして、この広がりを嬉しく思います。
一方で、考えなければならないのが日本GPの将来です。
今回の契約が直接日本GPの開催に影響するわけではありません。しかし、年間の開催枠が限られるなか、各国の誘致競争は激しくなり、開催権料も上昇しています。
F1の運営会社によれば、開催契約には物価連動や年率最大5%の増額条項が設けられるのが一般的。観客が増えても、費用の上昇によって開催の継続が難しくなる可能性があります。
《海外に学ぶ、公的支援のあり方》
「わずか3日間の大会に、なぜ公的支援が必要なのか」という疑問もあるでしょう。海外の事例を交えながら解説します。
・シンガポール政府は、F1の承認開催費用の60%を支援しています。大会を観光だけでなく、国際会議や商談と結びつけ、国全体の経済的利益を生み出しています。
・オーストラリアは、ビクトリア州政府が観光客の誘致や地域経済の活性化、国際的な知名度の向上を目的に、公的法人を通じてF1開催を支えています。州議会予算局は、州政府の拠出がなければ開催と契約の履行が困難になる可能性が高いと分析しています。
重要なのは、開催日数ではなく、その機会を通じて国や地域にどのような価値を生み出すかです。
ただし、公費を投じれば成功するわけではありません。過去フランスGPでは、多額の公的負担に対し、十分な経済効果が確認できなかったことなどが指摘されています。
《日本GPを、国の成長につなげる》
F1は、世界最高峰のスポーツツーリズムの一つです。今年、鈴鹿で行われた日本GPには、3日間で延べ31万5,000人が来場し、うち海外からの観客は延べ10万5,000人に上りました。
世界中から観客が集まり、観光や宿泊、飲食にとどまらず、国際的なビジネス交流や都市のブランド価値向上にもつながります。日本GPは、こうした価値を毎年生み出すことのできる、我が国の貴重な国際的資産です。
だからこそ、単なる自動車レースではなく、観光、産業、地域経済を成長させる機会として位置づけるべきだと考えます。
例えば、観戦をきっかけに開催地から周辺地域へと周遊を広げる。日本のものづくりを紹介する産業観光や企業間の商談につなげる。子どもたちが科学技術に触れ、世界への挑戦を夢見る機会をつくる。
3日間の大会を、その後の交流や経済活動、次世代の人材育成へとつなげることが重要です。
《2029年を見据え、支援の仕組みを》
現在の日本GPの開催契約は2029年までです。その先も日本でF1を開催し続けるため、今から準備を進める必要があります。
スポーツ庁や観光庁を中心に、主催者、自治体、企業が連携し、海外誘客や交通環境の整備、広域観光を一体的に進める体制をつくるべきです。
開催権料への公的支援も選択肢の一つです。ただし、公費を投じる以上、支援の必要性や規模を慎重に判断し、観光消費や雇用、税収への効果を客観的に検証することが不可欠です。
目指すのは、単なる大会の赤字補填ではありません。
日本が長年にわたり築いてきた国際的な資産を守り、その価値を日本全体の成長につなげることです。
F1日本GPを、次の世代へ。
国として支える仕組みづくりを進めていきます。




